城山自然の家 2012−4号
  神奈川県相模原市緑区小松川のほとり
  平成24(2012)年秋季号 
                 
 「城山自然の家」の隣を小松川が流れています。その水源地を11月3日、四国から来た友人と歩きました。水源の雄龍籠山の頂上部は東西に山道がのび、金毘羅神社の東側は眺望が良く、遠くには横浜ランドマークや東京スカイツリーが見えます。
 山はコナラやミズナラの雑木林で覆われています。その下層には地面を這うようにコウヤボウキの花が一面に咲いていました。やがて花が終わり実が着く頃になるとしなやかな茎も枯れて堅くなります。
 今では行われなくなりましたが堅くなった茎を刈り取り冬の夜なべ仕事として高野箒を作ったようです。またこのあたりでは、「マブシを借りる」と称し普門寺の飯綱権現堂付近から取れるクマササやコウヤボウキを束ね蚕が最初にヒキる時に使う、マブシをこしらえて繭を作らせたと云います。
 「マブシを借りる」と云う珍しい行事は正月14日の例大祭の日に行われ権現堂には繭玉が奉納されていたと云います。この冬の時期は、コウヤボウキも枯れてマブシや箒を作るのに良い季節だったのです。その養蚕も津久井では平成22年の晩秋蚕を最後に終わってしまいました。これも時代の流れでしょうか淋しい気持ちになりました。
  
   雄龍籠山のコウヤボウキ(ウサギカクシ)
 11月6日、飯綱権現堂の山の斜面に今でもコウヤボウキがあるか見に行きました。権現堂からの眺望は良くなりましたが木が伐採されて山の斜面が明るくなり、また下草も刈られていたためコウヤボウキやクマササを見ることができませんでした。そうした中、黄色い花のヤクシソウが咲いていました。とても可愛らしい花で葉の形が薬師如来の光背に似ているところから名づけられたようです。
 秋も深まり、評議原のモミジも色づき始めています。田んぼの脇のホウノキの葉もヒラヒラと落ちてきました。暑かった夏の面影はもうどこにもありません。 


    参考
       相模民俗学会 民俗 第4集 昭和29年9月発行
       安西 勝 津久井郡川尻村の養蚕習俗
       真言宗 金剛山普門寺  発行平成2年12月
       平成5年11月7日/安西勝講演資料 第1回ふるさと城山物語 〜蚕の民俗を中心として〜

          (仮)城山自然の家だより
             戻る