石仏修復事例

                   東京都野外文化財 現況調査報告書より
                   平成8年3月    東京都教育委員会発行
                   八王子市大横町7−1 極楽寺

      
    極楽寺 水鉢               徳本上人 「南無阿弥陀仏」石塔 
                            修復後
  
    
    塩野適斉墓(八王子千人同心の一人)
    「新編武蔵風土記稿」、「新編武蔵風土記稿」の編纂に従事した。
    
    事業内容 @塩野適斉墓、笠塔婆修理      A保存覆屋建築
    修理期間 平成5年9月〜平成6年5月20日
    

    
    長田作左衛門墓
    大久保長安の指揮に従い、八王子町の建設にあたった。

    事業内容 @長田作左衛門墓修理   A供養塔覆屋の設置
    修理期間 昭和63年10月5日〜平成4年3月31日
    保存処理の概要
    @石材の含浸強化
 まず塔身および笠石をそれどれ石材強化剤(SS101)を満たした槽に数日間どぶ漬けして充分に強化剤を吸収させ、槽から取り上げ自然乾燥し樹脂を硬化させた。(保存状態が良かった中央の供養塔は現地において同じ強化剤の塗布含浸を数回繰り返すに止めた。)この石材強化剤はメチルトリエトキシシランのオリゴマー(半重合体)の有機容媒溶液であるが、これは石材中でエトキシ基が常温で水分と反応してシラノールとなり、さらに縮合して最終的には耐侯性に優れたポリシロキサンを生成して石の凝集力を強化するものである。またポリシロキサンのメチル基によって処理後の石材に撥水性が生ずるので、外部からの水の浸入を防ぐことができる特徴もある。
 この強化剤は処理後の外観、特に質感の変化はほとんど無い。しかし、ときには暗色化する場合もあるが1年程度経過すれば色調は次第に回復するものと思われる。また、この強化剤は必ずしもすべての石造物に適すると言えるものではなく、塩類風化で劣化する磨涯仏のように内部から水が滲みだす場合には、逆に劣化を促進する恐れもあるので適応性について十分な調査が必要である。
    A折損部の接合及び割損部の充填接着
 含浸強化後、石材が部分的に脱落する危険のある箇所は、本体より外してエポキシ樹脂で接着した。笠石に多く見られたような亀裂、割れ目の中で充填接着が必要と思われた箇所には、低粘度エポキシ樹脂を注入して接着したが、保存上問題がないと思われた亀裂や割れ目はそのままにした。すべての割れ目に樹脂注入することは技術的に困難であり、また外観的にも見苦しくなる恐れがあるからである。
    B塔身の表層剥離の接着
    C供養塔覆屋の設置 
                       調査報告書より一部を抜粋(文責 樋口清治)

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