加藤武雄と一瀬豊・農民文学の扉 平成9年(1997)6月1日、「若き日の加藤武雄の足跡を訪ねて」と題し有志でバス旅行を企画したことがありました。行き先は山梨県立文学館でした。文学館では4月26日から6月29日までの特別企画として「ー雑誌「文章世界」を軸にー 前田晃、田山花袋、窪田空穂」と題し地元出身で編集者前田晃を中心とした企画展が行われていました。 この企画を知ったのは、私の郷里が山梨でそれも文学館に近かった関係もあり、まったくの偶然でした。その頃は未だインターネットも発達してない時代でしたので、本当の意味で「たまたま」と云うのが正解かと思います。また、その頃加藤武雄の地元では「加藤武雄生誕110年の記念行事」が何とか出来ないか検討していた時期でもあり、バス研修の実行までにそう時間はかかりませんでした。とは云うものの企画展の内容がどの様なものかは全く分かりませんでした。それでも「加藤武雄の投書時代の事が少しでも分かれば」と、そんな願いを持ちながら先ずは小池さんと下見に出かけることにしました。隣はミレーの絵を所蔵するあの有名な県立美術館でした。 私たちは文学館の北側にある特別企画室の中に入りました。「あるかなー・・・・・よく調べられたなー、よかったなー。」これが私たちの最初の印象でした。三人の資料は山のように展示され、その中には加藤武雄自筆の手紙もありました。そして、田山花袋にまつわる掛軸など、私たちは次第次第へと引き寄せられて行きました。今もそうなのですが、この頃はまだ加藤武雄の作品群と行実を知ることだけが精一杯で加藤武雄がどれほどの文学者であったか、また山梨の文学者たちとこんなにも交流を深めていたなど考えてもいませんでした。 さあ、「加藤武雄農民文学の扉」を開けよう。
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